気持ちだけが先走る。

リノリウムの白い床を蹴って、廊下突き当りの研究室の扉に、激しく肩をぶち当てた。

飛び込んだ部屋いっぱいに……血の香り。

最悪の結末に、うまく呼吸できない。
喘ぐように肩で息をして、血だまりの中に倒れる白衣の人たちを、一人ずつ確認した。

これは彼女じゃない。
これも違う。
違う違う違う。

ふと視界の隅に、ちらりと動く影が映る。
こみ上げるものを飲み込み、必死にその影を追うと、女性がうつ伏せに倒れているのが見えた。
研究用の冷蔵庫の青白い光に照らされて、彼女の長い髪がどす黒く濡れている。

床に落ちた彼女の指が、かすかに動いた。

「生存者一名! 早く、急げ!」

床を滑るように、彼女に駆け寄る。
抱き寄せたい気持ちをこらえて、そっと彼女を仰向けにした。
胸の真ん中に、真っ赤な穴。

「大丈夫。助かるよ」
彼女の細い指を握りしめた。
いつのまにか、自分の白いワイシャツに血が染みている。

「お前が、死ぬわけがない」