カチカチ、カチ

私は慣れた手つきでアルファベットと記号の描かれたキーボードの上に指を軽やかに滑らせている。画面に映るのは、患者さんの診断書。○○大学附属病院の医療クラークをしている私、高木真央。

父がこの大学の学長をしているせいか、私の就職先はすんなり決まって、父には感謝している。

「真央ー、一応これ確認してくれる?私、カタカナ多いと不安になって…」
「わかりました。あ、宮澤さん、これ、完了しました」

束になった書類を宮澤さんに渡した。

「わっ、ありがとう真央!やっぱり真央はすごいわね」
「そんな。ありがとうございます」

宮澤さんは「たのもしい!」と言って持ち場に戻った。宮澤さんは私より10歳年上の先輩。2人のお子さんを持つ、母親であり、この医療クラークないのお姉さんである。

私も宮澤さんみたいになりたいなぁ…

そんなことを毎日思う。