高木さん、って…

閉めたドアにもたれかかって目を閉じた。ドクドクと鳴り止まない鼓動。


俺の知らない真央

真央は俺と別れて何を思った?
誰を愛した?
誰の名前を呼んだ?

あぁ、そうか
今の真央には…

ふと、ある男を思い出す。明らかに頼り無さそうな、ビクビクした真央と同期の男、いや、彼氏。

邪魔しちゃいけない
せっかく手に入れた幸せを、壊しちゃいけない





ここは仕事場だ
気を抜いちゃだめなんだ




ロッカーから白衣と無線機とペンを出し、鍵を閉め、更衣室のドアを開ける。そこにはもう、誰もいない。



静かに胸が軋んだ。




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