私は耳を疑った。
え?
今、なんて?
初対面の私にこんなこと、しかもサラッというこの"男"に恥ずかしさと怒りが湧き上がった。カァっと体から熱が出て、みるみるうちに私の顔を赤く染めていた。
「やっ…やめてください…!!」
パチンと、その手を払って私は立ち上がりスカートを払った。
「なんだよ、親切に手ぇさしのばしたっていうのに」
そう言って持っていた傘で自分の肩をポンポン叩いていた。私はただ、高いところから楽しそうに細い目をしている男を睨んだ。
「睨むなよー」
「………」
「傘なくて困ってたんじゃないの?」
「っ……」
それには、なにも言えない…
ね?と覗き込んできた先輩に対してコクリと頷くとフッと笑って先輩は玄関を出て傘を差した。
あ……
歩きだした先輩を確認すると私は俯いた。
入れてくれると思ったのに…
あ、でもでもでも
あの人は人気者で…
彼女とかいる…と思うし…
入れてくれないのは当然だよね…
ハッとして首を左右に振った。
というか、さっき遊ばれたもん
別に入れてくれなくてもいいし
こんな夕立、すぐ……
時計は既に6:30を回っていた。
さすがに帰らなきゃいけなくて、私はカバンを頭に被せ足を進めようとした、その時。
「入りな」
「……ぇ…」
歩きだしたはずの先輩が私の前にいた。
傘を持つ手を前に出して。
どくん……
心が温まった。そして速くなる鼓動。
なんだろう…
この感じ…
「……ほら」
「ふっ…ふぁっ!」
腕を引かれて倒れそうになりながら傘の中に入った私。そして少し漂う先輩の匂いにドキドキの胸を鳴らせていた。
「あ、あり…がとう…ご、ございます…」
「ん」
どうしたのかな、私?