新選組と最強子供剣士

土方は悩んだ。


沖田の話や様子を聞く限り、すぐに排除した方がいいのは明確。


だが、剣壱をここに置くと決めたのは局長の近藤であり、近藤は戦場では冷静な判断ができるが日常では別だ。


お人好しで穏やかな性格。


剣壱を追い出す、ましてや殺すなど認めないし反対するだろう。


「土方君、いますか?」


「ああ山南さん、入ってくれ」


襖を開けて入ってくる山南。


山南も土方が呼んでおいた人で、剣壱の監視を頼んでいる人の1人である。


「今、総司から剣壱のことを聞いたんだが、総司は剣壱を切り離した方がいいと思うそうだ」


「そうですか‥‥‥」


「山南さんはどう思う?」


「そうですね、私も剣壱君は危険だと思っています。子供とは思えません」


山南の言葉に、沖田と土方は敏感に反応した。


山南は比較的穏やかな性格だが、ものごとをき
っちりと判断する力を持っている。


新選組のことなら、多少の非道な判断ですらすることができるのだ。


「山南さんは何でそう思うんだ?」


「まだ一日しかたっていませんし、あの子との接触もほとんどないのですが‥‥‥あの子は私に近づいてこないのです」


「どういうことだ?」


「見ている限り、私達幹部より一般隊士との交流を大事にしているようです。でもその話の内容が気になりますね」


「内容?いったい何を話してるんですか?」


「話している者の出身やいつ新選組に入隊したのか。または入隊した理由。それと、私達幹部の剣術について」


「確かな情報か?」


「ええ、朝に隊士達から聞いた話です。五人の隊士全員が同じことを言っていました」


部屋に静寂が生ませる。


1日の間にこれほどの行動力。


さらには話している内容は、まるで新選組の内部を探っているようだと土方は思った。


「わかった。何にしろ、まだ様子を見る必要はあるだろ。今日はこれで解散しよう」


土方の言葉で、この場はお開きになった。





*********************