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剣壱が退室したあと、沖田と土方は部屋に行った。
沖田は部屋の壁に寄りかかり、土方は机に向か
って忙しそうに筆を動かしている。
「で?どうだったんだ?」
「‥‥‥‥」
土方が聞いているのは、剣壱のことだった。
実は沖田が剣壱のことを探ったのは土方の命令だからだ。
だが、沖田は口を開くことができない。
剣壱の本性の一端を思い出した沖田は、背筋が震え上がりそうだった。
「歳さん」
「なんだ?」
「あの子、すぐに処理するか追い出すかするほうがいいですよ」
「理由は?」
「あの子の目、普通の人間の目じゃない」
話の内容は話すことはできない。
だが、その様子だけなら話すことはできる。
そう考えた沖田は、自分が思ったことを話すことにした。
「剣壱と何してたんだ。話せ」
「それは‥‥‥無理です」
「なぜだ?」
「そう取引したからです」
「そうか。じゃあ剣壱と取引して、何を感じたんだ?」
「怖いと、素直に思いました」
それを聞いて土方は驚いた。
新選組の沖田総司は天性の剣豪をもつ男。
いつも飄々としていて掴みどころない。
自分に強く自信を持っているのが沖田の強さの活力だ。
その沖田が、子供相手に怖いと言っている。
「怖い?あいつが?」
「剣壱君がどこまで気づいているのはわかりませんですけど、あの子は危険です」



