「剣壱」


「っ!土方、さん?」


気がつけば、土方さんが廊下から僕を見ていた。


「朝っぱらから人の墓の前で何してんだ。珍しく呆けていやがったようだが?」


「別に‥‥‥何か用?」


僕がそう聞くと、土方さんは手に持っていた木箱を寄越してきた。


「何これ」


長方形の木箱。


それなりに重さがある。


「芹沢さんからだ」


「え‥‥‥」


芹沢さん、から?


コウさんといい土方さんといい‥‥‥


なんだか、朝からサプライズばっかだな。


「!」


木箱を開けて、僕は驚いた。


中には〈桜木剣壱へ〉とかかれた手紙。


そして‥‥‥芹沢さんの鉄扇子が入っていた。


「それと、これだ」


「うわっ、ぷ!」


土方さんが僕に何かを掛けてきた。


目の前が綺麗な水色に染まる。


それは、最近よく見る‥‥‥浅葱色。


「おめぇの新選組の羽織だ。 まだ大きいがな」


「なんで、これ‥‥‥」


「知るか。気がついたら、俺の部屋の仕入れに入ってたんだよ。お前の名前つきでな」


‥‥‥なんて古狸だ。


ほんと、バカなんじゃないのか?


こんな素性もよくわからない奴に、こんな大事なモノ渡すなんて。


本当に‥‥‥わからない人だなぁ。