水戸派のリーダー、芹沢鴨が死んで4日。
9月20日、芹沢鴨、平山五郎が壬生寺に埋葬された。
皆が芹沢さん達の死を嘆いた。
そして、犯人は長州の者ということになっていて居もしない犯人の捜索をしている。
葬儀が終わり、皆が部屋に戻った頃。
9月21日の、まだ日も明けきらぬ早朝。
芹沢鴨の埋められた土を、静かに優しくなでる少年がいた。
「芹沢さん‥‥‥」
ポツリと呟かれた声が、宙に消える。
作戦は成功した。
だが、少年の心は暗くなっていた。
あの夜、少年は刀を土方に渡して八木邸の入り口に立っていた。
ただ、呆然と。
土方と山南が立ち去って間もなく、1人の隊士が八木邸にやって来た。
「‥‥‥剣壱?剣君か!?」
充満する血の匂い。
そして‥‥‥少年自体も血塗れだった。
「おい、剣君、どうし‥‥‥!?」
隊士は八木邸の中を見た瞬間、絶句した。
入り口には、頭と胴体の離れた男と首の斬られた女の死体。
「剣壱、なぁ、何があったんだ!?剣壱!」
隊士が声を張り上げても、少年はただボーッと宙を見ていた。
その瞳は、何も写してはいない様。
「ハッ、芹沢さん‥‥‥芹沢さん!」
隊士が慌てて八木邸の中に入る。
そして驚愕に目を見開いた。
おびただいしほどの血を流し、倒れている芹沢鴨の姿がそこにあったのだ。
「せり、ざわさん‥‥‥芹沢さん!」