島原 角屋
土方達が部屋を出た後。
そこで、斎藤はゆっくりと酒を飲んでいた。
芸子達は既に下がらしており、斎藤と藤堂と永倉、そして井上の4人。
静かではないが、騒がしくもない。
いつも通り、藤堂と永倉は楽しそうに喋りながら酒を飲んでおり、斎藤と井上は隣どうしで酒を飲んでいる。
「それにしても、酷い雨だ」
無言の中、井上が口を開いた。
「ああ、そうだな。これでは、芹沢さん達が無事に帰っているかが心配だ」
斎藤は井上の言葉に応え、話す。
「そうだね。平間さんはともかく、平山さんと芹沢さんは酷く酔っていたし‥‥‥」
斎藤がここにいる意味は一つ。
藤堂、永倉、井上の三人を見張ることだった。
そして、八木邸に近づかせないこと。
ならべく屯所に戻る時間を遅らすこと。
これが、土方と近藤から命じられた任務。
「なぁ斎藤」
「なんだ?新八」
「今日、なんか土方さん変じゃなかったか?」
永倉の声に、斎藤は少し眉が動きそうになる。
だが、いつも無表情を保っている彼は何事もないように酒を一口含む。
それから永倉ともう一度目を合わせて、ただ一言。
「そうか?」
余計な言葉は、かえって不振がられる。
なにより、斎藤は普段からあまり喋る方ではない。
一言だけの方が、いつも通りなのだ。
「俺は総司が変だと思ったけどな」
不意に、藤堂がそう言った。
今回は本当に突然で、斎藤は眉を一瞬動かしてしまう。



