ピクッ


不意に、叶の耳が動いた。


「ん?」


一息遅れて、僕は叶が見ているであろう場所を見つめる。


「あら?」


もう一息遅れて、立も気がついた。


叶は僕の足から降りて、ある方向を見つめる。


そこには、何人かの浪士であろう男の人達がいた。


「お客さんかな?」


「こちらに向かっては来ているようですが、まだ断定は出来ませんわね」


「にゃ~」


叶が僕の顔を見て鳴いた。


尻尾が揺れていて、僕のつけた青い布もヒラヒラと揺れている。


「‥‥‥ねぇ立、この前、新選組に喧嘩売ろうとした人達のこと覚えているよな?」


「2週間ほど前の?」


「そう。僕らが門番してた時のやつ。あれ、実は取り逃がしがいたりして‥‥‥?」


「はい?」


立にニヤリと笑って僕は言った。


僕はあの時〔殺すべきターゲット〕は全員殺した。


つまり、殺さないべきターゲットもいた。


「影でコソコソしてた糞野郎。仲間が殺されているのに、平気で逃げたクズがいたとしたらどうなると思う?」


「それはもちろん、復讐しに‥‥‥‥しかし、
こんなにピンポイントに?」


首をかしげて、?を浮かべる立。


疑問に思うだろうね。


ではでは、解説してあげよう!


「本当にこれは偶然なんだけどね?その取り逃してあげた浪士に、昨日会ってたりして」


「‥‥‥斎藤一と外に出たとき、ですわね」