自分の欲望のために‥‥‥‥


目的のために‥‥‥‥


自分が、生き残るために‥‥‥‥





「そういう意味では、僕もあんたと同じ、軽蔑されるべき人間なんだよ」





サァーと、風が通り過ぎる。


僕は卑怯で、何も守ることのできない弱虫。


だから、芹沢さんが羨ましい。


「小僧‥‥‥?」


‥‥‥‥らしくないな。


うん、らしくない。


こんなのは、僕じゃない。


‥‥‥‥‥さぁ、嘘をつこう。


自分を守ろう。


目の前にいる奴はターゲット。


弱さなんか、もう見せるな。


「あーあ、残念。芹沢さんのむさ苦しい泣き顔が見れると思ってきたのに」


「はぁ?」


「同情したら泣いてくれた?」


「誰が泣くか」


「え?でもさっき、ちょっと泣きそうな顔してたよね?」


「この暗さでその距離だ。見間違いだろ」


「今日は晴れだし、月も丸い。月明かりだけでも、十分に見えるよ」


芹沢さんの顔はハッキリと見える。


この顔も、もう見納めだ。


「さて、白凰の情報ももらったし、そろそろ帰るよ」


座っていた木箱の上に立って、僕は芹沢さんに笑顔を向けた。


そして芹沢さんに背を向け、塀を乗り越えようとしたその時‥‥‥‥