思わず身体を前に出して、笑顔になる。


よかった~


土方さんとかに、長州と接触してるなんて言いたくないんだよね。


「わしの見立てがあっているなら、そやつは長州の用心棒。通り名を〔銀狼夜叉〕」


「ぎんろうやしゃ?」


「銀のように輝く目。気高い狼のように美しい容姿。そして、刀を振るう姿は夜叉のごとく勇猛。

銀狼夜叉といわれるようになったのがいつかは知らん。わしも手合わせしたことがある」


「で、どうだったの?」


大きな溜め息をつく芹沢さん。


思い出したくない。


そんな顔をしているように見えた。


「負けたさ。斬り合って、わしは部下を置いて逃げた」


「!」


「軽蔑するだろ?」


酷く儚く、いまにも泣き出しそうな顔。


強く、たくましくあろうとする男の、一瞬見せた弱さ。


‥‥‥‥チッ、あいつと重なるっ!


「そうだね。軽蔑するよ」


「はっ、正直だな。ここは嘘をつく場面だろ」


芹沢さんは、そう言って笑った。


いつもの調子にすぐに戻る。


ああ、いいな。


羨ましい‥‥‥‥羨ましい。


「強い、な」


「何か言ったか?」


「‥‥‥いや、僕もおんなじだよ」


「?」


「部下を見捨てたことがあるんだ‥‥‥」


僕は、大切な仲間を見捨てたんだ。