気配を限りなく消し、なるべく人のいない道を通る。


そうして、ある部屋にたどり着いた。


「近藤さん、いる?」


「剣壱君か?入りたまえ」


剣壱は許しを得、部屋に入る。


瞬間、剣壱は瞬時に近藤に近づき、小刀を突きつけた。


「‥‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥」


お互いに無言。


近藤は小刀を突きつけられたことに驚いたが、
抵抗はしなかった。


変わりに、剣壱を強い目で見る。


そんな近藤に、剣壱が無機質な声で問いた。


「近藤勇、お前は芹沢鴨のことをどう思っている?」


重い空気が、その場を支配した。


剣壱も近藤も動かず、まばたきすらしない。


暫くして、近藤は瞼を下ろして言った。


「‥‥‥私は、芹沢さんのことを尊敬に値する男だと思っている」


その答えに、剣壱は驚いた。


剣壱にとって、それは予想していた答え。


だが、その言葉を発した時の力強さと覚悟を写した強い瞳。


その意志の強さに驚いたのだ。


剣壱は小刀を下ろし、一歩下がる。


そして近藤の目を見て言った。


「芹沢鴨を殺すんだろ?」


「‥‥‥そうだ」


「水戸派を壊すんだろ?」


「そうだ」


「もう、裏切ったんだろ?」


「そうだっ!」


お互いに目を反らさない。


だが剣壱は、近藤がどれだけ心を殺して言葉を発しているかを知っていた。