気がついてはいた。


やっぱり、お梅さんが話していたのか。


だけど‥‥‥寂しそうな、ね。


「お主はただの小僧ではない。そのくらい、わしにも分かる」


「何で?」


「だがな、小僧。これだけは覚えておけ」


不意に芹沢さんの目が鋭く細められた。


すごい威圧感だ。


自然と背筋が伸びる。


「変わらないモノなど、この世にはない。正義だけでは、何も守れない。そして、悪だけでは何も生まない」


‥‥‥‥すごく、強い目だ。


まるで全て見透かされているような感覚。


僕の全てを知っているかのような、内面をえぐり出されそうだ。


悪だけでは何も生まない、か。


‥‥‥知ってるよ。


「何が言いたいか分からない」


「大切なモノは、失って初めて気づく。お主がここを大切に思っているかな」


「!?」


芹沢さんの言葉に、思わず立ち上がった。


ここを大切に思ってる!?


この、僕が?


「違うよ、芹沢さん」


確かに、救われたこともあった。


だけど、だけどそれとは別だ。


ここは僕の目的のためへの道にある休憩所。


大切なんかじゃない。


芹沢さんは僕の目をジッと見ていた。


この人は失ったんだ。


仲間という、新選組という物を。


それに気づいているんだ。


「芹沢さん、僕には芹沢さんは救えない」