車は発進された。



「…あの、高城さん」

「なんですか?」

「お父さんは…」

「早朝に出て行かれました。今日も大事な契約があると仰っていました」

「そうですか…」



朝、お父さんがいないことに気づいたがそういうことだったんだ。
…これからいつも独りでご飯を食べて過ごすんだな。



「何かご不満がございましたら仰ってください」

「…いえ」

「私は美鈴お嬢様の執事です。少なくともお嬢様の味方であることはお忘れなきよう」

「あたしの味方…?」

「もちろんです。お嬢様の為でしたら私ができる範囲以内でお申し付けください」

「ほんとに、いいの?」

「はい」



…高城さんの言葉に少し胸がホッとした。



「…じゃあ、ご飯を食べるときは一緒に食べて欲しいんです」

「一緒に食べる…ですか?」



車のミラーに映る高城さんの顔は驚いていた。



「…ダメですよね」

「いえ。それがお嬢様のお望みなら構いません」

「ありがとうございます」



私は少しだけやっていけるような気がした。