ミットを2、3回叩いた
マスクを降ろした

長く息を吐いて、座り込んだ

7回表
点差は相変わらず1点

2アウトランナー無し


さあ――


もう1点も入れさせねえ!!


3番端バッターが、バッターボックスに入った
マスクの中で、目だけでバッターを見た

コイツは、ストレートを欲しがってる
苦手なのは、1番と同じフォーク
でもコイツだって全国だ
フォークが苦手な夕のフォークなんて、今度こそ打たれる




さて、俺、どうする?



目を閉じた


考えろ

考えろ

考えろ――


『――決めた』

ミットの下で、素早くサインを送った

親指

人差し指と中指

ぱんっ
ミットを叩いた

夕が小さくうなずいた


っしゃあ、来い!!



ばしんっ

手の平に、ミットを越して衝撃が走った
しっかりとボールが収まっていた


「トライクッ」