動き出した、君の夏

明ちゃんがコーナーに入った
メンバーの中で1番タイムが遅いのは明ちゃんだけど

バトンパスとコーナリングの技術は、誰にも負けない

ほら、この瞬間のコーナリングだって、全く外に膨らまないしスピードも落ちない


始めは長距離志望だった明ちゃんは、後半も全然落ちない



コーナーを走り終わった

瑞希が、少しだけスタートが早かった

でも、その細い体からは想像できない加速をして、すぐに瑞希に追いつくんだ



あたしが遅くても
瑞希が出るのが早くても
先輩として情けないけど明ちゃんが、全部何とかしてくれる



そして、明ちゃんと瑞希のバトンパスの上手さは部内1だ

「ハイッ」

瑞希がすぐに腕を上げた

触れるか触れないか
部内最速のバトンパスをした
次の瞬間は、もう明ちゃんの右手にはバトンは無かった