「あ、やっぱバレてた?」

美夜子の尊敬するところはどこか、と聞かれたら真っ先にここをあげるくらいに鋭い。洞察力なのか勘なのかは分からないのだが・・・

「うちじゃなくたって分かるっての、あんなキョロキョロしてたらね」

「今日大学で見かけた人がいて─」

これだけで目を爛々とさせるのだから美夜子の恋愛好きは大したものだ。

「あ、別にかっこいいとかそんなんじゃないの。ただなんていうか、“色が無い”って言えばいいのかな・・・」

上手い表現が見つからない。自分でもなぜ気になったのかはよく分からない。ただ、大学で見かけた時は真逆のように感じたのだ。それこそ“華やか”な人、だと思った。

『まもなく─、出口は右側です』

口ごもっていることを美夜子にからかわれつつ喋っているうちに車内放送が入って助かった。
美夜子はこの駅で、私は次の駅で降りる。またそのうち質問攻めにあうのは目に見えているが・・・

「あ、ついちゃった。その人の話は後でまた聞かせてね!また明日!」

明日は部活。吹奏楽部に入ってる私達はコンクールに向けての練習がある。

「うん!また明日ね」

─あの人、なんだったんだろう─

美代子を見送った後、結局気になった私は携帯を開いたのだった。