背中合わせの恋



私は昔から一人だった


両親は政略結婚でお互いに愛情なんて抱いていなかった

跡取りが必要だからというただそれだけの理由で行為に及び幸か不幸か私を身ごもり出産した


愛なんてない両親は私をまともに育てなかった

父は仕事人間で家により一層帰らなくなりついには会社の近くのマンションの一室に寝泊まりをするようになった

母は元々神崎家の財産目当てで結婚した我儘女で父がいないことをいいことにホストクラブにあしげく通い好みの男を見つけては貢ぎ散財する


こんな両親が私の面倒を見るなんて一文の得にもならないことをするわけなく、小さい頃から使用人の人たちが母であり、父だった


けどそんな日も長くは続かず、物心ついた頃から英才教育がスタートした

勉強はもちろん、華道・茶道・ピアノ・ヴァイオリン・スイミングなどありとあらゆるものを習わされた


目的はもちろん『神崎家にふさわしい人物であるため』


一人娘の私に課せられた使命は神崎家を継いでくれ、なおかつ有益をもたらしてくれる会社の長男以外のご子息に見初められること



ただそれだけの為に私は自由を失い、希望を捨てた