背中合わせの恋


「なんで敬語?」

「なんとなく」


立場上結城夏哉の方が上だ

生意気な女だと思われたら婚約を破棄されるかもしれない


私にとったらそんなことぐらいなんてことないんだけど、会社のことを考えると迂闊なことはできない



「特に理由がないなら敬語やめてくれ。同級だろう?」

「そうだけど・・・」

「それに、敬語だと距離を感じる。親密さを出すにもその方がいいだろ」

「・・・分かった」


いくら政略結婚でも冷え切った関係だと足元を掬われかねない


本当、どこまで計算してるんだか・・・


「この後のこと聞いてるか?」

「何も」

「一通り挨拶周りが終了したら俺たちは自室に戻っていいことになっている。だが、ゆっくりしている時間はない。

すぐに結城家の迎えが来るからそれに乗って俺たちは今日から住むマンションに移る手筈になっている」

「分かった」


荷物はもう運んでいるみたいだし、いつまでもここに居座る必要ないものね