「・・・分かった。行くぞ」
「はい」
差し出された腕にそっと自分の腕を組み、隣に寄り添った
ふわりと香った結城夏哉の香水は私の好きなにおいでなんだか泣きたくなった
「ごめんね・・・」
こんな私と結婚することになって
政略結婚に巻き込まれることになって
結城夏哉には想い人がいると高校時代からの専らの噂だった
それが誰なのか、誰もが突き止めようとしていたけど結局結城夏哉は口を割らなかった
そんな私の謝罪を聞いたのか結城夏哉は一瞬驚いた顔をしたが私を罵倒するような声はなく眉を寄せただけでパーティー会場へ足を進めた
きらびやかな衣装を身にまとい
スポットライトを当てられ
何百人もの視線を集め
喝采の拍手を浴び
眉目秀麗で将来有望の御曹司にエスコートされ
私は会場入りした
そんな言葉だけ並べれば最上級の幸せなんだろうけど、私にはその全てが苦痛でしかなかった
結城夏哉に促され祖父と結城家の当主が並び立つステージに立った
