普通なら冗談だと言って終わってしまいそうなことだけど、楓は俺の言葉を真に受けているらしい。

楓は拭くのをやめると、ハンカチをギュッと握りしめて俯いた。

細くて小さな肩が微かに震えている。


「朔が死んじゃったらわたし……悲しくて我慢できない。だから死にたいなんて言わないで……」

「わかった。二度と言わない」

「約束だからね」

「うん、約束」


肩を抱き寄せると、楓は縋るように俺のシャツを握りしめる。

しばらく寄り添っていると、チャイムの音が聞こえてきた。


「早く教室に帰らないと」


楓が離れようとするけど、俺は楓が離れないように腕に力を込めた。


「もう少しだけ、ここにいない?」