よかった。勘違いはしてないみたい。

ほっとしていると、楓が「でも……」と言って、ハンカチを取り出し、俺の口をゴシゴシ拭き始めた。


「ふぁ、ふぁえへ!?(か、楓!?)」

「ジッとしてて、綺麗にしてるんだから」


い、いや、あのですね。

綺麗にしてくれる心意気は嬉しいけど、けっこう痛いです。もう少し優しくしてほしい。

……でも、一生懸命背伸びをして、真面目な顔で拭いてくれる楓をみたらそんなことは言えなくて。

ここは楓の優しさに甘えて、どんなに痛かろうがジッとしておく。


「……朔、二度と死にたいなんて言わないでね」

「へ?」


死にたいって……ああ、皇にキスされたとき、そんなこと口走ってたな。

あれはちょっとした錯乱状態だったから言っちゃっただけで、今はそんなこと微塵も思ってない。