――― 昨日の放課後。




「今日は俺、用あるから。

お前、先帰ってろ。」



「あっ、うん...」




そういった冬真君は、私をおいてサッサと教室から出て行ってしまった。




(別に、毎日一緒に帰る約束なんてしてないし...

いいよね、落ち込まなくても。)




そう思いながらも、私は少々落ち込んでいた。




「由夏は部活あるし、剛は...」




剛とはあの日以来、顔を合わせていなかった。

というより、きっと私がずっと冬真君といるからだと思う。




(じゃあ、一人で帰るか。)




カバンを手に取り、私は教室を出た。

私が廊下を歩いていると、向かい側から急ぎ足で、澤田先生が歩いてくる。




(そういえば、みんな言ってたな。

『急ぎ足の澤田はキケンッ!』って。)




そう思った私は、サッと回れ右をした。

...が、間に合わなかった。




「おっ、篠原!

ちょーどよかったよ~。


これ、杉田先生んとこ、届けてくんない?」



(ヴッ、間に合わなかった...)



「...は~い。」




肩を落とした私は、しぶしぶ先生からプリントを受け取った。




「おう、サンキューな!

気をつけて帰れよ!!」



「はーい。」



(相変わらず、人使い荒いんだから...)




私はいったん教室に戻ってカバンをおろし、トボトボと職員室へ向かった。