「いや、何でもないです!!」




キョトンとするお母さんをおいて、私は家中を走って探し回る。




(どこ?

どこに隠れてるの??)




すると、レオ君がチマチマと階段を降りてきた。




「レオ君っ!」



「あっ、おねえちゃん!」




私を見ると、レオ君は嬉しそうにニコッと笑った。




「レオ君、この前のお兄ちゃん見なかった?」



「このまえ?

えっと...カッコイイおにいちゃんのこと?」



「そうそう!!」



「ぼく、見てないよ?

えっ? おにいちゃん、遊びに来たの?!」




そういったレオ君は、目をキラキラと輝かせる。




「ううん、違うの。

見てないなら、いいんだ...」



(おっかしいなぁ...

確かに入ってくるの、見たんだけどなぁ~...)




家中探しても小田桐君の姿は見つからず、私は一人、首をかしげる。




「ねぇ、ねぇ、おねえちゃん!

ぼく、おねえちゃんの絵、描いたんだよっ!!」




そういいながら、レオ君が私のスカートのすそを引っ張る。




「あっ、う、うん。

...じゃあ、お姉ちゃん、着替えてくるね。」




謎が解けぬまま、私は階段を上る。




(私の幻覚か?

いやいや、そんなはずが...)





それから私の頭の中は、今日、目撃した小田桐君の姿が、頭について離れなかった。