「あー……うっぜぇっ。黙れよ」
静かな、けれど確実に怒りを孕んだ声だった。
身体を回転させて再び自分の下に小鳥を組み敷くカロン。
「きゃ!?」
あっという間だった。
「んっ…!」
カロンの息が首にかかったと思った瞬間、小鳥の白い柔肌は鋭く長い牙でもって貫かれていた。
「やめ、て…カロン…さん…!痛、いっ!」
「んんっ…」
前にされた吸血とは全く違い、容赦なく血をもっていかれる。
至近距離でゴクゴクと飲み下すリアルな音が聞こえて小鳥は目眩を感じた。
「い、たい……たす、け…て」
ツーと目尻に涙が伝う。
無意識に伸ばした右手はカロンに捕らえられ、指を絡ませられた。
怒りを肌にぶつけられているのに、握られた手は優しい。
カロンの手の温もりを嬉しく思いながら目を閉じると、小鳥の目から更に涙が溢れてこぼれた。
「…か…ろん…さん…」
「っ…!」
小鳥の涙声に反応してカロンが牙を抜く。
自分が押し倒している彼女の瞳を覗き込むと、カロンは空いている方の手で涙を拭ってやった。
「ごめん……」
震える声で悲しげに謝るカロン。
「ごめん……小鳥」
赤い瞳が迫り、小鳥の視界を覆った。
重なった唇。
微かに血の味がしたかと思うと、それはすぐに離れた。
握られた手の温もりと共に。



