「それからシャルロットが俺の方を向いたんだ。憎悪に塗れた…とても醜い表情だった」
――あんたね…?あんたがわたしのカロンを連れ出したのね!?あの女の息子!あんたが!!わたしのカロンをどうするきだったのよ!!わたしが来なかったら殺すつもりだったんじゃないの!?そうでしょ!そんなこと絶対に許さないんだから!!!
「彼女は手に持っていたハサミを俺に振りかざした」
「ハサミ…?」
「……なぜ持っていたのかは知らない。おそらく出て来る時とっさに持ち出したんだろう。狂気的な面があったからな、彼女は」
顔を刺されると思い、フェオドールは怯んだ。
動けずにいたその時――。
――やめろっ!!
カロンが割り込み、フェオドールを庇った。
「怪我をしたのはカロンだった…。腕から血を流しながら…あいつは言った」
――フェオ!ケガは?ケガはない!?
「……大丈夫だ、と答えたら…カロンは笑った。腕の痛みなど、感じていないかのように」
他人を気遣える優しい子なのだと、フェオドールは理解した。
自己中心的なシャルロットとは違う。
――イヤァア!!わたしのカロンから…わたしのカロンから血がぁあっ!!
そう叫んで喚くシャルロットにカロンはゆっくり近づいた。
――ママ…ごめんなさい。へやにもどろう?
そしてフェオドールを振り返り、悲しげに微笑む。
――バイバイ…フェオ
再びあの監獄に戻ることを告げたカロン。
全てを諦めたような彼の瞳が、フェオドールの心をえぐった。



