その日、仕事から帰ってきたカロンは真っ直ぐ小鳥の部屋へ向かった。
真っ先に彼女に会いに行くのはいつものことなのだが、今日はちょっと特別だ。
これから、らしくないことをしようとしているせいか、カロンは無駄に緊張していた。
「おーい、小鳥」
「あ、お帰りなさい。カロンさん」
「ん。ただいま」
いつもの会話をしてからソファーに座っている小鳥の隣に腰掛ける。
そして本題へ移ろうとした時だった。
「あ、あの…」
「ん?」
小鳥が先に話し出した。
「今日、ニュースを見てたら……その…カロンさんが出ていて…」
「うん」
「わ、私のこと…婚約者だってバレちゃって……大丈夫なんですか…?」
「ああ…あれか。あんた見たのか」
「はい……偶然」
小鳥が膝の上でキュッと拳を握る。
「ファン号泣、って書いてありました…。フィアンセがいるってバレちゃったら、ファンの人達…カロンさんのファンやめちゃわないですか…?」
「は?」
「カロンさん、アイドルだから…女の子関係の噂があったら、ファンの人達いい気はしないだろうし…。それでファンが減っちゃったら、お仕事に支障が…」



