こっちに来てくれないと、聞こえない。
そう言って微笑む蜜莉は確信犯だ。
千恵の後ろめたさに気づいているからこそ、理由をつけて距離を縮めようとする。
「っ…」
一歩。
また一歩。
ゆっくりと千恵が歩き始めた。
穴が開いている靴から親指が飛び出しているのを、蜜莉は悲痛な思いで見つめる。
やっと目の前まで来た時、千恵は涙声で囁いた。
「ごめん…なさい…」
そして俯いてしまう。
腕の中には飛び込んでくれなかったことをちょっぴり残念に思いつつ、蜜莉は立ち上がって自分から距離を詰めた。
「千恵……僕の方こそ、ごめんね」
ふわりと抱きしめる。
「手放すつもりなんて、なかったんだ。千恵がつらい時は一緒にいてあげたかったし……怖い思いをしてるなら助けてあげたかった…」
彼女のボサボサの髪を、慈しんで撫でる。
「君は僕が苦しんでる時、いつも隣にいてくれたのに…。それなのに……僕はっ…」
何もしてあげられなかった。
「ごめんっ、千恵…。僕を、許して…」



