「待った!!!!」
勢いよくナイフを引いて血を溢れさす前に、誰かが千恵の手を掴んだ。
「あっ…」
見上げれば、緑色の髪をした見知らぬ青年が視界いっぱいに映る。
「あんた、千恵って奴だろ?」
「だ、れ…?」
「俺はカロン。蜜莉のダチだ」
蜜莉の名前が出て身体が勝手にビクリと反応した。
「蜜莉があんたに会いたがってる。だから死ぬな」
「え……?」
思わず、聞き返しそうになる。
(今……なんて…?)
――蜜莉があんたに会いたがってる
意味をハッキリ理解した瞬間、再びボロボロと涙がこぼれた。
「あ……あぁ……生き、てる……ミッつん…生き…て…!」
カランとジャックナイフが地に落ちた。
「カロン様!千恵は見つかりまして!?」
遅れて野薔薇が駆け付ける。
「ああ。こいつだろ?」
「千恵…!」
みすぼらしい千恵の格好を見て野薔薇は目を見開いた。
こんな汚れた場所で暮らしている今の千恵は、普通なら軽蔑の眼差しを向けられる存在だ。
しかし、野薔薇は軽く深呼吸すると、泣いている千恵を優しく抱きしめた。
「千恵……もう、大丈夫ですわ。だから…泣かないで」
「っ…あ……の、ばら…姉さっ……姉さん!」
懐かしい温もりに、ギュッと抱き着く。
「ごめんなさい…!ごめん、なさいっ!」
大声を上げて泣き出した千恵。
興奮状態の彼女を落ち着かせてから、三人は歩き出した。
蜜莉の待つ病院へ。



