憎しみと愛情。
正反対の思いが渦巻いて心が壊れそうになる。
今に始まったことではない。
だから長年、自分をこの地獄に捨てた彼に復讐する夢を見ることで心を安定させてきた。
愛情の方を切り捨てて。
再び会えることを願った。
けれど。
(本当は…会いたくなかったの…!)
死ぬまで出会わなければ、大好きな彼を手にかけなくて済んだ。
それに、こんな自分も知られずに済んだのだ。
(こんな姿……見られたく…なかった…!)
彼が昔、綺麗だよと撫でてくれた黒髪はツヤをなくしボサボサ。
千恵は純粋だから白が似合うねと言って微笑んでくれた彼を思い出しながら、身にまとう黒ずんだボロボロの衣服を見つめる。
ずっと路上で暮らす汚い自分。
「ミッつん……私……きたないね…。とっても…きたない」
大好きな人の返り血で手を染めて。
心も衣服同様にズブズブと黒ずんでいく。
「こんな私に…生きてる価値なんて……もう…ないね」
千恵はスペアで持っているジャックナイフをポケットから取り出した。
蜜莉を刺したナイフは現場に置いてきてしまったから、これで済まそうと覚悟を決める。
「手首…?切ったら……死ね、るの…?」
震える。
身体が、震える。
「っ……!」
左手首に添えたナイフ。
握る右手にグッと力をこめ、勢いよく――。



