†††
人通りが多く、楽しげな声が聞こえる華やかなネオン街。
しかし、ビルとビルの隙間にある薄暗い路地を行けば、そこは華やかさとは掛け離れた吹き溜まりだ。
その裏道を千恵はトボトボ歩いていた。
手や服には、ところどころ真新しい血がついている。
蜜莉の血だ。
「……みつ、り…」
小さな声で大好きな、けれど憎らしい名前を呟く。
(私、ね……大好きだったんだよ…?あなたのこと…)
大好きだった。
彼も自分を好いてくれているのだと、ずっと信じていた。
(だって、あなたはとっても優しかったから…)
それがペットに対する愛情でも構わなかった。
どんな形でも、愛してくれるなら。
蜜莉の傍に、いられるなら――。
「なのに……どうして……?」
涙が溢れそうになって、千恵は上を向いた。
泣きたくなかった。
涙なんか、とうの昔に涸れ果てたはずだ。
そう――捨てられた、あの時に。
――蜜莉がね、もういらないって
突然、闇市場に連れて来られて、彼の弟からそう聞いた。
――飽きちゃったから、違うペットを飼うんだって。もうキミは用済みなんだよ
――うそ……うそだ!!ミッつんは!?ミッつんに会わせて!!