「……そうか……だから千恵は……あんな目で…僕をっ…」
理解した瞬間、ツー、と蜜莉の頬に涙が伝った。
それを優しく紫音が舐め取る。
「蜜莉の憂いはボクが払う」
ゾクリとするセリフを囁いて柩から立ち上がった紫音は、病室から出て行こうとした。
「ま…待って紫音!!どこ行くの!!紫の――ぐっ!」
声を荒げた蜜莉に激痛が襲い掛かる。
「ミッつん!落ち着いて!興奮したら傷が…」
慌てて駆け寄った小鳥に、蜜莉は悔しそうな表情を向けた。
「で、もっ…!紫音を……とめなきゃ…!」
このまま野放しにしたら紫音は必ず千恵を殺しに行くだろう。
「わたくしが行かせませんわよ、紫音!!」
「ウザイ!!離れろよ!!野薔薇!!」
弟の背後から抱き着いて動きを封じる。
野薔薇は念のためカロンにも指示を出した。
「カロン様!ドアを頼みますわ!」
「おー。任せろ」
唯一の出入口の前でドンと仁王立ち。
カロンの壁を越えて廊下へ続く扉を開けるのは難しそうだ。
と、その時――。



