(あれ?でもおかしいな。ミッつんは千恵さんが脱走したって言ってるけど……確か紫音さんは…千恵さんのこと売っちゃったって…。あれ…?)
――だから、売っちゃったんだ。蜜莉に内緒で。あんな目障りなペット、いらないよね。だってボクの気分を害することしか能がないんだもん
紫音のセリフを一字一句正確に思い出し、小鳥は戦慄した。
大変な事実に気づいた小鳥の横ではカロンと蜜莉がこんな会話をしている。
「カロン。あのゲームのキャラさ、千恵に似てるんだ」
「え?ああ、俺が選んだらダメッつったあれか」
「うん。そっくりだから、あのキャラに似た子を見掛けたって聞いて、絶対千恵だって思ったんだよ」
「成る程な。だから血相変えて飛び出したのか」
「むっ。冷静に出て行ったと思うけど」
「焦ってますオーラが出てた」
「ですが、千恵はなぜ蜜莉を刺したんですの?動機がいまいちわかりませんわ」
野薔薇が話を戻すと、蜜莉は顔を曇らせてうなだれた。
「僕もわからないんだ。…やっと見つけた千恵は……僕を見るなり襲い掛かってきた……恨みのこもった目をして」
深い憎悪が宿る瞳を思い出し、傷が痛む。
傷ついた胸をギュッと手で押さえていると、蜜莉の隣に紫音が腰掛けてきた。



