蜜莉の手が微かに震える。
「ペットが脱走する話はよくニュースとかで聞いていたけど…まさか千恵が逃げ出すなんて…信じられなくて…」
姉と一緒に様々な場所を探したが、千恵は見つからなかった。
「千恵は…僕を嫌っていたのかな…?何がいけなかったの…?わからなくて……。ただ千恵がいなくなった現実が、ひどく虚しくて…」
「……好きだったのか?そいつのこと」
ぽつりとカロンが問えば、蜜莉は涙をこらえるように笑った。
「……うん。愛してる」
この表情を見て、小鳥はやっとわかったような気がした。
「正しい人間の飼い方」という授業を選択していた蜜莉の気持ち。
(あの時、ミッつん言ってたよね)
以前、どうしてこの授業を選択したのかと尋ねた小鳥に、彼はこう返した。
――……飼いたい子がいるから、かな?
(それは…いなくなっちゃった千恵さんを取り戻したいってことだったんだね…)
逃げ出したペット。
何がいけなかったのかわからなくて、自分の悪いところを直すためにあの授業を取った。
「彼女がいなくなって気づいたよ。だから、また会えたら……プロポーズするつもりでいたんだ。未練がましいって思われても構わないから……伝えたかった…。僕の気持ち」



