「ふーん。なら違うやつにする」
カロンが諦めると蜜莉はあからさまにホッと溜息をついた。
(ミッつんが取り乱すなんて…珍しいんじゃないかな?)
いつも落ち着いている彼だから、感情のままに叫ぶ声を初めて聞いた。
(このキャラだよね)
カロンが見ている絵を覗き込む。
と、ある事に気がついた。
「あ…このキャラ、今日会った女の子と似てる…」
ゲームセンター前で女性を助けた黒髪少女と雰囲気が似ている。
「え?どのキャラ?」
なぜか小鳥の独り言に蜜莉が食いついてきた。
「さっきミッつんがダメって言ってた、黒髪の女の子だよ」
教えてやれば彼は目を大きく見開いて硬直してしまった。
「どうした蜜莉。さっきからおかしいぞ」
カロンが蜜莉の顔を探るようにジッと見る。
「あっ…ごめん。……ね、ねえ、小鳥。その女の子と…どこで会ったの?」
「ゲームセンター前だよ」
「そう…」
しばし考える様子を見せた蜜莉は徐に立ち上がるとドアへ向かった。
「ごめん、ちょっと用事ができたから出掛けるね」
「あ、おい蜜莉」
「良ければ今日は泊まっていきなよ。姉さんも喜ぶだろうし」
パタンと扉が閉まる。
無理に笑顔を作って蜜莉は出て行った。



