その優しい笑みを見た瞬間、カロンの瞳から涙がこぼれた。
泣きたいわけじゃないのに、次々と溢れて止まらない。
「カロンさん…?」
彼の涙の意味がわからず首を傾げる小鳥。
そんな彼女をぼやける視界で見つめながらカロンは優しく囁いた。
「……もう…いいよ…。あんた……この部屋から出なよ…」
「え…?」
「いや…それよりも、まずはメシが先か」
袖で涙を拭い、乱れた心を落ち着かせるように息を吐く。
「ほら、行くぞ」
「きゃ…!?」
小鳥を横抱きにして持ち上げると、カロンは真っ直ぐキッチンへ向かった。
(賭は俺の負け、か…)
良かったとホッとする反面、白魔の言葉が気分を憂鬱にさせる。
――もし僕が勝ったら彼女は貰うから。覚悟して
(冗談じゃねぇっ)
やっと小鳥を解放しても彼女の愛情を素直に信じようと決心することができたのだ。
奪われないよう、カロンは小鳥を抱く手に力をこめた。



