さて、それから数日後。

ルカが書斎を訪れたことでそれは起こった。

「フェオー、いる?」

兄を探していたルカが書斎のドアを開ける。

すると室内には、椅子に座って仕事の書類にボンヤリと目を通しているフェオドールがいた。

「あ、良かった。いた」

「ん……?ルカ……」

フェオドールが視線だけを動かしてルカを見る。

ルカは眠そうなフェオドールに近寄った。

「この前の授業のプリント、間違えてシュレッダーにかけちゃってさ。新しいの欲しいんだけど、ある?」

「……プリント?」

「ほら、テスト範囲だって言ってたあれ」

「ああ……それなら、俺の部屋に」

「あるの!?マジかぁ……さっきフェオの部屋行ってさ、自分で探そうとしたんだけど全然見つかんなかった。フェオの部屋、片付いて無さすぎてわけわかんねーよ」

弟から文句をぶつけられ、フェオドールは無表情で一言。

「……俺は、わかる」

「それ当たり前だろ!フェオがわかってなかったら、わかる奴この世に一人もいないから!」