「俺とデートして、小鳥」

不意打ちのキスと甘ったるい声のおねだりに、小鳥はドキドキしつつ微笑む。

「うん……!」


(不思議……。ルカくんといると、悩んでることとか、どうでもよくなっちゃう)


具体的な案を聞かされた訳でもないのに、ヴォルフの問題もどうにかできそうな気がしてくるのはなぜだろう。

もし、ここにクラヴィエ家の大黒柱がいたら「愛のパワーだ!」と叫ぶこと間違いない。

「……じゃあ、もう寝る時間だから、戻るね。ルカくん、おやすみなさい」

会話が途切れ、小鳥が照れながらルカから離れようとした、その時。

キュッと、ルカの手が小鳥の服を遠慮がちに掴んだ。

「もう、行っちゃうの……?」

まだ一緒にいて、と。

寂しげに潤んだ青い瞳が小鳥をジッと見つめてくる。


(す、捨てられそうな、子犬……!)


ルカの頭に犬の耳が見えた。

弱気になってペタリと垂れている犬耳だ。

「やっと……やっと、二人きりになれたのに……部屋から出したくない……。あいつに邪魔されて、最近小鳥との時間が全然とれてないのに……」

独り言のように小さく呟いてから、ルカは意を決した様子で口を開いた。

「小鳥……一緒に、寝ない?な、何も、しないから……!」

「え、ぃ、いっしょ……?ここで?」

「うん。俺の柩、半分こ。……なにも、しないからっ」