「で、どの墓だっけ?」
白魔が問えば先頭を歩いて案内を始めるランベルト。
教会内には入らず、十字架が並ぶ墓場へと向かう。
「こっちこっち。目印はあれだね」
あれ、と言ってランベルトは等身大の聖母像を示した。
白い石で形作られたマリアは立ったまま祈りの姿勢をとって眼前にある墓を見守っている。
「メメント・モリは?書いてあるの?」
「もちろんだとも!それは墓石に刻まれているよ。ほら、証拠」
白い墓石に刻まれている「memento mori」の文字。
「あれは…?」
首を傾げる小鳥を白魔が見遣る。
「地下への入口を示す共通の言葉さ。これが書かれているところには地下へ繋がるエレベーターがある。うちの屋敷の門にも刻まれているよ」
「え!?気づきませんでした…」
帰ったら注意して見てみよう。
小鳥がそんなことを考えていると…。
「この像を、こうやって…ヨイショ!」
日傘をエマに持ってもらったランベルトが、両手でマリア像を掴みグルリと回転させた。
聖母が方向を変え、後ろ向きになる。
「ふー。これで良し」
次の瞬間、ゴゴゴと音を立てて墓石がスライドし、地下への階段が登場した。
本来なら人の遺体を埋葬するための空間だが、どうやらここから闇人の世界へ行くらしい。
「早く入ろうよ。もう地上はうんざりだ」
ご機嫌斜めな白魔が日傘をエマに返して躊躇いなく階段を下りていく。
小鳥は慌てて彼の後を追った。
「もう、せっかちさんだな~。あ、エマ!荷物運びを頼むよ」
「かしこまりました」
「いっぱいあって大変だろうからね。ゆっくりおいで」
別れ際、エマにキスを送ってからランベルトも慣れた薄暗い世界へと消えた。



