遠慮や優しさとは違う。
単なる嫉妬心からの「お願い」だった。
それを自覚しつつ、静理は気恥ずかしげに微笑む。
「小鳥ちゃん。俺を誘ってくれて、ありがとう。それから……ごめんね」
「え……?どうして、謝るんですか?」
静理の微笑が苦しげなものに変わった。
彼は観念したようにポツポツと語り始める。
「白状すると、俺はずっと君を避けていたんだ」
やっぱりか、とは口に出さず、黙ったまま小鳥は続きに耳を傾ける。
「怖かった、みたいなんだ。君に近づくと……俺はなんだか、調子が狂ってしまうようだから。さっきも、簡単に白魔の挑発に苛立ってしまった自分に、心底呆れたよ」
静理は熱っぽい瞳で小鳥を見つめながら、自分が触れられる距離までそっと近づいた。
そして、彼女の柔らかな頬を愛しげに撫でる。
「君と少し距離を置けば平気だろうと思っていたけれど、甘かったな。……君のことが、いっそう気になって仕方ない」
ドキリと小鳥の胸が高鳴る。
触れられている頬がやけに熱い。
微笑みと共に静理の手が離れていく。
「明日は楽しもうね。おやすみ」
自室ではなく居間へと向かう静理に気づき、見惚れていた小鳥はハッと我に返った。
「お、おやすみなさい……!」
一度だけ振り返り、静理は微笑んだ。



