「待って下さい!静理さん!」
廊下に出た小鳥は自室に戻ろうとする静理の背中に呼び掛けていた。
小鳥の声を耳にし、静理の動きがピタリと止まる。
「小鳥ちゃん……?」
彼は振り返って僅かに目を見開き、追いかけてきた小鳥を見つめた。
(静理さん、こっち見てくれた……!)
これはチャンスだ。
言うなら今しかないと察し、小鳥は口を開く。
「あの、静理さん。……わ、私と、一緒に行ってくれませんか?」
一緒に行きたいから、静理が行くかどうか質問したのだ。
もう回りくどい会話はやめて、頑張って誘ってしまった方が良いのではないかと腹をくくった小鳥だったのだが。
「…………」
静理は無言だった。
「はい」か「いいえ」か。
それすらも反応がない。
「ダメ、ですか……?あっ、お忙しいなら、無理にとは……!」
「いや、無理じゃない。大丈夫だよ。ただ、その……白魔達も一緒というのは遠慮したいかな」
やっと喋った静理が疲れたように苦笑した。
「なら、白魔さんやルカくんに一緒に行けないって断ってきますっ!」
静理の了承が嬉しくて、彼の出した条件をクリアするべく居間に戻ろうとする小鳥。
けれど、すぐさま静理に止められた。
「待って、小鳥ちゃん。俺が言っておくから、君は行かなくていいよ」
「でも、誘われたのは私ですし……私がちゃんと断った方が……」
「行かないで。お願いだから」



