カロンには、絶対に渡したくなかった。
その本音に気づき、静理は頭がクラリとした。
「静理、さん……?」
小鳥の揺れる瞳が静理を見上げる。
静理も、動揺しつつ彼女の瞳を見つめ返した。
(こんなの…………俺らしくない)
静理は小鳥から目をそらし、そっと離れた。
逃げるように背を向け、そのまま通りを歩き出す。
そんな静理の後ろ姿を追いかけることなく見つめてから、小鳥は何かを決意した眼差しでカロンに向き直った。
「ごめんなさい、カロンさん。私は……静理さんが、いいです」
「マジで?ゼッテー苦労するし危ねぇし良いことなくね?」
「それでも、です」
静理がいい。
ただそれだけを強く思い、小鳥は微笑んだ。