(嘘だろう……?今、俺は……)


怖いと、思ってしまった。


(小鳥ちゃんを失うのが、怖い?)


失って怖いものなんて、生まれ落ちた時から何もないはず。


(………こんなの、俺らしくない)


自身を否定したところで、何もならない。

事実は変わらない。

小さな恐怖がそこにはあった。

そんな静理の心情を知ってか知らずか、カロンがハァと溜息をつく。

「静理って、いちいち面倒臭いよなー。なあ、小動物。やっぱ俺のペットにならねぇ?めっちゃ可愛がってあげるけど?」

甘えるような声を出すカロンが小鳥に擦り寄った瞬間、静理はカッとなった。

理性が働く前に、体が動く。

小鳥へと、手が伸びる。

気がつけば、静理は小鳥の体を自分の方に引き寄せ、カロンから守るように強く抱き締めていた。

カロンも小鳥も、唐突な静理の行動に驚いて固まっている。

けれど一番驚いていたのは、我に返った静理自身だった。


(今、俺は何をした……?どうして……小鳥ちゃんを……)