一歩横道に入ればそこは、明かりのない細い道。

そんな暗い歩道が多い地下世界ではあるが、人気商店の集まる場所は他よりもキラキラしている。

お目当ての店は華やかな商店街の一角にあった。

クラヴィエ家から徒歩で行ける距離だ。

「ほい、到着」

連れて来られたのはお洒落なショーウィンドウの前だった。

そこには大人っぽいドレスを着た女性のマネキン人形が飾られている。


(ここ、私が絶対に入らないようなお店だ…!)


大人っぽくてお洒落なお店とは大抵お高いのだ。

何より安さを重視する小鳥にとって、理王の店は外から眺めて終わる類いのものだった。

分不相応な気がして後退りたくなるのだが、小鳥の心境などお構い無しにカロンは店の扉を開く。


ーー娼館を経営しているような男のところに女の子を行かせたくないと思うのは、おかしなことかい?


なぜかここで静理の言葉が頭の中に蘇り、背筋がぞわりとした。


(ちょっと見たら、さっさと帰ろう…!)


会うつもりはない。

それなのに、カロンが無駄な行動力を発揮した。