言葉の通り、本当に迷惑そうに静理は表情を曇らせた。

そんな彼を見て、小鳥は思う。


(もし、少しでも静理さんを好きだってことが知られたら…)


自分も、今のような表情をされてしまうのだろうか。

可能性を否定できず、小鳥の胸がツキンと痛む。

「俺は仕事以外で、なるべく彼と関わりたくない。だから小鳥ちゃんにも関わって欲しくないんだ」

そっと静理の手が小鳥の頬に触れた。

「娼館を経営しているような男のところに女の子を行かせたくないと思うのは、おかしなことかい?」

瞳を覗き込まれながら心配げな表情で囁かれ、先程までの感傷など吹っ飛んだ小鳥の胸がドキドキとうるさく高鳴り出す。

「お、おかしく、ないです…」

「そうだよね。わかってくれて嬉しいよ、小鳥ちゃん」

ニコリと笑う静理を見上げ、いつの間にか行かない方向へと約束させられたことに気付き、静理には勝てないと改めて思った小鳥だった。