「平気かい?吸血されそうだった?」
「いえっ、大丈夫です」
小鳥の側までやって来た静理は取り敢えず血の臭いがしないか確認しようとして、不快な香りに眉をひそめた。
「この香り…」
「あっ、白魔さんの香水だと思います」
「白魔の?」
険しい目付きをしつつ、静理が更に一歩、小鳥へと歩み寄る。
「……白魔に抱きつかれたのかな。君から、香っているよ」
「え!?」
移り香、というやつだろうか。小鳥は頬を赤らめた。
「……不愉快だね」
落とされたのは、低い声。
小鳥はハッとして静理の顔を見上げた。
一瞬、とても冷たい赤の瞳と視線がぶつかる。
しかし次の瞬間には、静理は綺麗に微笑んでいた。
「おいで、小鳥ちゃん」
ガシリと手を掴まれ、連行される。
有無を言わせないその行動に小鳥は驚いた。
(静理さん、どうしたんだろう…?)
手を引かれるままについていくと、静理は廊下の奥へ奥へと進み、バスルームの中に小鳥を引っ張り込んだ。
そして直ぐ様シャワーを手に取ると、水を出して小鳥にかける。



