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 窒息するような苦しさの中、溺れるように人を憎んだ。

それ以外に何が心の支えだったのか、静理は覚えていない。


「困ったね。何度躾たら物分かりの良い犬になれるのかな。このままじゃずっと、駄犬のままだ」

「だ、誰が犬だ!俺は…人間だ!!」

「わかっていないね。君達人間は俺達にとって、食糧であり嗜好品であり愛玩動物なんだよ」

片手にムチを握り締め、静理は鉄格子と鎖と血痕が目立つこの部屋で彼らを躾る。

そう、ここは静理の調教部屋。

クラヴィエ家に捕まった憐れな人間達が行き着く末路の一つ。

この日も静理はここで自分の任されている仕事をこなしていた。

「人間は自分達が世界の全てを支配し管理するべきだと勘違いしている愚かな生き物だ。だから闇人に飼われて、その傲慢で思い上がった思考を改めた方がいい」

鎖に繋がれた人間の少年を前に静理のムチが唸る。

反抗的な眼差しを屈伏させることが彼の役目だ。

従順な奴隷に仕立てあげてからじゃないと闇人の客に売れないため、ここでの躾はかなり重要である。

「人間は恐怖と快楽に弱いよね。さて、君にはどちらを試そうかな」

ニタリと顔を歪ませて、血のように赤い静理の瞳が下等生物を捉えた。