「小鳥ちゃん」

「え……?」

「俺がわかる?」

小鳥が静理の顔を覗き込む。

やっと彼を静理だと認識したのか、小鳥は目を丸くした。

「……っ、ぁ……し、ず……」


怖いーー。

静理の顔を見て、小鳥の中で最初に湧き上がった感情は純粋な恐怖だった。

死ぬ直前の記憶が脳内を駆け巡り、彼の側は死の恐怖と直結する危険がある、と本能が警鐘を鳴らしてくる。

「小鳥ちゃん……」

静理の指が優しく小鳥の頬を撫でようとして、失敗した。

「っ、やぁ」

嫌がる小鳥が顔を背ける。

あからさまな拒絶に静理の胸はズキリと痛んだ。

「わた、し……どうし……っ!?」

自分の状況を尋ねようとして、口内に広がる血の味に気づく。

小鳥は呆然とした。

「わたし……血、を……!?」

「小鳥ちゃん、落ち着いて聞いて欲しい」

静理の声は真剣だった。

たとえ彼女が自分の方に顔を向けてくれなくても、小鳥を真っ直ぐ見つめて真実を伝える。

「君は、闇人に……吸血鬼に、なったんだよ」