「兄様、本気なんだね」

「……ああ」

「なら、僕は…」

ゆっくりと息を吐き出す。

オーレリアンはやっと、つり上げていた目尻を下げた。


「祈るよ……兄様と、小鳥の未来を」


「………ありがとう」


フェオドールも表情を和らげる。

三十分継続していた睨み合いがようやく終わったようだ。

ホッとしたのは小鳥よりも、むしろルカだった。

「ねえメスブタ」

「えっ」

「お前なんか僕にとってはただの家畜なんだからさ、あの時の言葉はさっさと忘れろよ。いつまでも覚えられてる方がウザイから」

僕を選べと言ったオーレリアン。

それを綺麗に忘れろと言う。


(忘れたくない…)


あの言葉が同情だったとしても小鳥は救われかけた。

しかし、オーレリアンはそれを望まない。


(なら……)


小鳥は小さな嘘をつくことにした。

「…わかりました」

ニコリと微笑んで彼を安心させる。

オーレリアンはフイと視線をそらしたが納得したようだ。